夢に見るほど美しい

いつも朝は憂鬱。夢から覚めることが怖い。
どんな理不尽な夢でも僕は常に役割がある。

「主役」「脇役」「傍観者」「当事者」「被害者」「加害者」

夢では何にでもなれる。誰の気持ちにも応えられる。

だけど一旦夢から覚めてしまうと、もう、何者にもなれない。

一方方向に進むだけ時間に身体を委ねる。
この時代のチグハグな規則に違和感を感じつつも、
無理矢理着こなそうと焦る日々。

けれど、今日は君がいた。それに笑っていた。
いつからかここでは笑わなくなっていた君が。
眉間の皺、色のない瞳、左曲がりに困った唇。
そんな君をなんとかしたい。
チグハグな気遣いで空回りする僕を見て、
優しい君は空を見上げることが多くなった。

ここでは何にもなれない。
主役でなくてもいい。
君が笑ってくれる世界でなら道化になれるのに。
いつも自分が不在で不甲斐ない。

軽傷と継承

僕が生きた証明を残したい

夏の魔物に魘される夜に

隣で寝ている君に悟られないように泣いた

何を残せるだろう

挫折、失恋、失望、失敗の物語

腕の傷、胡乱な自己啓発、詭弁術

胸を張れるものが何もない

生まれてからずっと、それを探している

僕から生まれるものは何もない

かわいい君と心傷と

誰にでも秘密がある

でもそれを暴こうとする者が現れたら

慌てず、焦らず、言い訳せず、笑って済ませなさい

その理由に悪意があろうとなかろうと、その者にくれてやる義理はないのだから

秘密はだから秘密として、フリでいいから忘れない

いつか風化するまで忘れれば、それでいい

僕と初夏

窓の外は見事な晴天で、しばらく仕事を放って見惚れてた。 それは雲ひとつなく、海と取り違えるほど澄んでいたので、

(今すぐ飛込みたい)

そんな気持ちになった。 しかし、今、僕がいる場所は5階であり、さらに仕事中だったので、その気持ちグッと堪えた。

窓から吹き込む風は乾燥していながらしっかりと青葉の匂いを含み、 夏がすぐそこまで来ていることを確信させる。 居ても立ってもいられなくなり、僕は遅い昼休憩を名目に会社から飛び出した。 夏とは何処に行けば逢えるかわからないけれど、 とにかく明るい方へ、とにかく暑い方へ、足を向ける。 なにか起きそうな青い空を仰ぎながら。

猫の話

モノクロームの毛並みに黄色の瞳
鼻の黒子がやけに魅力的
ピンと張った六弦がうたた寝合わせふらふら揺れる

陽なたぼっこに夢中なくせに、腹が減った時だけ話しかけてくる
暗闇、まんまる瞳孔が開くと余計に愛おしい
この世の縺れも気にもせず、何処吹く風で過ごしている

怒りも哀しみも憂いも根こそぎ奪う変なやつ

白昼夢

人を殺める夢を見た。

いや、見た、というよりは体験した。

夢の中の僕は人を殺った。

凶器はこの手だ。
ひたすら対象者の顔を身体を殴るだけ。
対象者の髪を掴み、その柔らかい頬にほぼ骨の拳が減り込む。
ゆっくりとスローモーションで。
異なる部位が瞬発的に何度も触れると、相手の体温と摩擦が起きる。
痛みと熱が同時に襲ってくる生々しさ。

対象者が逃げようとすると追いかけるが、足の重さは鉄を背負ったように重い。
どんどん対象者が離れていく。
それでも伸ばした手は対象者の服を掴み、引き摺り下ろす。
段々と重くなる身体で対象者に馬乗りになり、体重いっぱいに殴り続けた。

行為の間は殺意の自覚している。
間違いのない真っ直ぐとしたもの。
こいつの所為で。という私怨。

理由はなんだっけ。

掃除機で吸われたように、いきなり夢から醒める。

手の痛みも重い身体もない。
柔らか過ぎるベットが気分が悪い。
カーテンの隙間から真上の太陽の日差しで眩みながら、起き上がろうとする。

が、何かから押さえつけられているように体が動かず、また、夢に引きずり込まれる。

ああ、さっき僕が殴り殺したのは。
きっとそう。

誰にも知られない場所

僕が言葉を綴るのは、誰かに自分を褒めて欲しいことと、医者が勧めたから。

才能なんて無いし、自分に素直さなんて無いし、見栄っ張りな言葉の羅列が手帳を埋め尽くす。 無い無い尽くしのこの僕を知らない誰かが知ってくれるのは悪い気がしない。

だけれども、それがサイト上のアナリティクスの数値であろうが、「いいね」の数だろうが、 君の「良いね」に勝る一言には敵わない。

敵わないんだよ。

結局、僕が求めているものは数値じゃなくて、君の意見。 ふたりだけの楽園だけで良いって思ってしまう。

自己顕示欲とかプライドとか。 要らないんだ。

他人が入り込めないくらい遠い遠いどこか遠くへ君とふたりで生きたんだ。

僕の話。

これは僕の話。
誰でもない。僕のこと。知って欲しい3つのこと。

僕はいつだって孤独だ。
どうしようもなく空腹で貪欲で何より浅ましい。
屹度お医者にかかっても治らない。
愛する人ができても救われない。
次から次へと穴ができ、塞ぐだけの人生だ。

僕はいつだって不在だ。
自分の意志では物事を決められない愚かな人間だ。
世界に受け入れて欲しいと願うばかりに自分を偽り続けた代償。
自我の確率。僕は落ち零れた。
自分らしさを持つ君等が羨ましく、疎ましい。

僕はいつだって消えたいと願っている。
三月の雪のような小汚い存在で、必ず跡形もなく消えることを信じてる。
誰の記憶に残らず、何にも成れず。
名もない山の名もない小川の音を聴きながら、腐る身体を動物に与え、骨は苔むし、土に還る。

3つの僕と3つの理想。
それが僕の話。

凪のような休日

飼い猫が歩く。
配偶者が掃除をする。
ロールカーテンの隙間から陽が射す。
吊るしっぱなしの風鈴が風で鳴る。

此処は籠とも箱とも檻とも呼ぶに相応しい
穏やかな空間。
大いに自分を甘やかし、無駄という贅沢な時間を過ごす。

明日からまた理詰めの海を泳ぐ為に必要な空間。

厭な雨

厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ

自分に繋がる総ての因果を
ただ厭だという理由だけでぶち壊したい